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「レシピに”すりごま”って書いてあるけど、すり鉢がない…」
「市販のすりごまじゃダメなのかな?」
胡麻和えや白和えを作ろうとして、この壁にぶつかった方は多いと思います。
こんにちは。現役の和食料理人です。すりごまはすった瞬間から香りが立ちのぼるのが命で、そこが市販品との決定的な差です。だからこそ「家にあるもので代用できないか」は、真剣に検証する価値があります。
そこで今回は、本物のすり鉢を基準に、代用4パターンを実際に試して比べました。条件をそろえるため、白ごま大さじ1をそれぞれ1分間すって、どこまで到達するかを見ています。
結論を先に言うと、いちばん本物に近づいたのはハンドブレンダーでした。

結論|代用4パターンの順位
| 順位 | 方法 | 粒の状態 | 香り |
|---|---|---|---|
| ★基準 | すり鉢+すりこぎ | 細かく均一 | いちばん立つ |
| 1位 | ハンドブレンダー | 一部ムラが残る | 2番目に立つ |
| 2位 | 袋+めん棒 | 皮が少し残る | 程よく油と香りが出る |
| 3位 | 包丁で切る | ある程度つぶれる | 穏やか・上品 |
| 4位 | 器の底でつぶす | ほぼ粒のまま | 立ちにくい |
先に大事なことをお伝えします。この比較で分かったのは、「細かければいい」わけではないということです。細かさと香りは必ずしも一致しませんでした。詳しくは各項目で説明します。
実験の条件
- 同じ白ごまを大さじ1ずつ、5パターン分用意
- それぞれ1分間作業して、どこまですれるかを比較
- 粒の状態・香りの立ち方・手間の3点で評価

「終わるまでの時間」ではなく「1分での到達点」で比べたのには理由があります。方法によっては、いくら続けても終わりが来ないからです。時間をそろえたほうが、実力の差がはっきり出ます。
ひとつだけ、下ごしらえのコツ
すり始める前に、ごまを軽く炒ってください。市販の炒りごまでも、フライパンでもう一度さっと温めるだけで香りの立ち方がまるで違います。香ばしさが出て、食欲をそそる胡麻になります。これはどの方法で作る場合も共通です。
まず基準|すり鉢(当たり鉢)は何が違うのか
比べる相手を知るところから始めます。
すり鉢の内側には、「櫛目(くしめ)」と呼ばれる細かい溝が放射状に刻まれています。この溝がごまを逃さず捉えて、すりこぎとの間で確実にすりつぶしてくれます。

この櫛目こそが、代用品との決定的な差です。あとで見ていきますが、平らな面で押しつぶす方法がうまくいかないのは、ごまが逃げてしまうからなんです。
プロは「当たり鉢」「当たり棒」と呼びます
ちょっとした豆知識を。料理の世界では、すり鉢を「当たり鉢」、すりこぎを「当たり棒」と呼びます。
これは「する」が縁起の悪い言葉とされたため、「当たる」に言い換えたものです。私もそのように教わりました。すりごまのことも「当たりごま」と言います。この記事の後半で、その当たりごまを作ります。
1分すった結果

1分で、細かく均一にすれました。口に入れるとなめらかで、香りの立ち方も文句なし。当然といえば当然ですが、これが基準になります。

写真を見ると、粉になった部分と、まだ粒が残っている部分が層になっているのが分かります。すり鉢を使うときは同じ場所ばかりすらず、全体をまんべんなくすってください。粉が溜まってきたら、鉢を少し回して位置を変えるとムラなく仕上がります。
1位 ハンドブレンダー|いちばん本物に近い
代用の中でいちばん良かったのが、ハンドブレンダー(付属のチョッパー容器を使用)です。

1分後の状態がこちらです。

写真ではっきり分かるとおり、粉になった部分と、粒のまま残っている部分にムラがあります。刃が回る範囲とそうでない範囲ができてしまうためです。
ただし香りの立ち方は、すり鉢に次いで2番目。香ばしさがしっかり出ました。ムラは途中で数回止めて、容器を振ったり混ぜたりすれば軽減できます。
手間の少なさも圧倒的です。スイッチを押すだけで、力もいりません。「今日すぐ必要」という場面では、これがいちばん現実的な選択でしょう。
ハンドブレンダーの選び方はハンドブレンダーおすすめ2選で詳しく書いています。1台あるとポタージュや離乳食にも使えて、出番の多い道具です。
2位 袋+めん棒|油が出るのは、悪いことではない
ポリ袋にごまを入れて、めん棒で転がしながらつぶす方法です。


1分後は、見た目にはかなり細かくなりました。ただし皮が残る感じがあり、すり鉢のようななめらかさには届きません。

そして特徴的なのが、油が出てくること。写真でも、粉がしっとり湿ったような質感になっているのが分かります。
これは欠点のように思えるかもしれませんが、実際に食べてみると程よく油と香りが出て、むしろおいしいと感じました。ごまの油は香りとコクそのものですから、出ること自体は悪くありません。出すぎるとべたつきますが、1分程度なら「ちょうどいい」範囲です。
洗い物が出ず、袋ごと捨てられるのも実用面での利点です。
3位 包丁で切る(切りごま)|上品に仕上がる
まな板の上でごまを刻む方法です。和食では「切りごま」という立派な技法で、薬味として使われます。


1分でここまで刻めました。ある程度つぶれて、粉も出ています。

香りの立ち上がりは穏やかです。ただしこれは劣っているという意味ではなく、上品な仕上がりと言ったほうが正確でしょう。ごまの香りを主張させたくない繊細な料理には、むしろこちらが合います。
ひとつ注意点として、わずかに苦みを感じました。刃で切断する過程で、すりつぶすのとは違う出方をするのかもしれません。気になるようなら量を控えめにしてください。
なお、この作業は切れる包丁でないと余計に時間がかかります。包丁の手入れは包丁の研ぎ方で解説しています。
4位 器の底でつぶす|正直、代用にはなりません
バットにごまを広げて、ガラスの器の底で押しつぶす方法です。


結果は、はっきり言ってほぼ変化なしでした。

1分たってもほとんどが丸いごまのまま。一部だけがつぶれて、ムラが激しい状態です。香りもほとんど立ちませんでした。
理由は明快で、平らな面どうしではごまが逃げてしまうからです。すり鉢に櫛目が刻まれている意味が、この結果でよく分かります。さらに、押すたびにごまが飛び散るので後片付けも大変でした。
どうしても他に手段がないとき以外は、おすすめしません。
5つを並べて比べる
同じ量・同じ時間なのに、ここまで差が出ました。

分かりやすいように、それぞれ使った道具を横に置いて並べています。上段の左がすりこぎ、右がハンドブレンダー。下段は、左が袋+めん棒、中央が器の底、右が包丁です。
中央の器の底だけが、ごまの粒の形をとどめているのがひと目で分かります。逆に、すりこぎ・ハンドブレンダー・袋の3つは、見た目だけならかなり近い。ここから先の差は、食べて香りをかいでみないと分かりません。だからこそ、見た目だけで判断しないでほしいのです。
すり鉢でしかできないこと|20分すって「当たりごま」にする
ここからは、代用では届かない世界の話です。
すり鉢で20分ほどすり続けると、ごまはどうなるか。粉を通り越して、ペースト状になります。これが「当たりごま」です。


ごま自身の油が出て、なめらかに練り上がった状態。市販の練りごまに近いものが、自分の手で作れます。香りは市販品とは比べものになりません。
1分の実験でいちばん良かったハンドブレンダーでも、ここまでは持っていけません。時間をかけて、少しずつ細胞をつぶしながら油を引き出す——これはすり鉢の櫛目とすりこぎでしか到達できない領域です。
当たりごまで作る「胡麻クリーム」
せっかくなので、その当たりごまで1品作りました。お店で出している胡麻クリームです。

| 当たりごま | 60g |
| 砂糖 | 15g |
| 醤油 | 10g |
| 生クリーム | 30g |
| 出汁 | 45g |
作り方はすべて混ぜ合わせるだけです。
ポイントは生クリームと出汁を両方使うところ。生クリームだけだと重たく洋風に寄りすぎ、出汁だけだとさらっとしすぎます。両方を合わせることで、コクがありながら和食の一品として成立する濃度になります。醤油はほんの10g、味付けというより香りと輪郭を出すために入れています。
いちじくの胡麻クリームかけ
この胡麻クリームを、皮をむいたいちじくにかけました。

いちじくのやさしい甘みと、胡麻のコク。季節を感じながら食べていただける一品です。前菜にも、食事の締めのデザート代わりにもなります。
柿や梨、白桃でも同じように作れます。旬の果物に合わせてみてください。
料理人はすり鉢を何に使うのか
参考までに、私が厨房ですり鉢を使う場面を紹介します。
- 海老真薯(えびしんじょ):えびのすり身をすり鉢で当たって、団子状にまとめた和食の定番。すり鉢で当たることで、身がしっかりつながって弾力が出ます
- とろろ芋:おろし金ではなく、すり鉢ですりおろします。なめらかで、粘りの強いとろろになります
- 当たりごま:この記事で作ったもの。胡麻和えの衣、白和えの衣、胡麻クリームなどに
共通しているのは、「なめらかさ」と「粘り」が料理の質を決める場面だということ。刃で切り刻む機械とは、仕上がりの質が根本的に違います。
代用でいいか、買うべきか
代用でいい人
- 今日のレシピに、少量のすりごまが必要なだけの人 → ハンドブレンダー、なければ袋+めん棒で十分です
- 胡麻和えを年に数回作る程度の人
買ったほうがいい人
- 胡麻和え・白和えを日常的に作る人
- 当たりごま(練りごま)を自分で作ってみたい人 → これは代用では到達できません
- とろろや真薯など、なめらかさが命の料理を作る人
すり鉢の選び方
私が使っているのはヤマセ(愛知・常滑)のすり鉢で、合羽橋(かっぱ橋道具街)で購入したものです。同じ商品をご紹介できるとは限らないので、選ぶときのポイントをお伝えします。
- 櫛目が細かく、きれいに刻まれているもの(ここがすり鉢の性能そのものです)
- サイズは直径21〜24cmくらいが家庭では使いやすい。小さすぎると中身が飛び出します
- 底に滑り止めがついているか。なければ濡れ布巾を敷けば問題ありません
- すりこぎは長めのもの。短いと力が入らず、腕が疲れます
よくある質問(FAQ)
Q. 市販のすりごまではダメですか?
A. 使えますが、香りはどうしても落ちています。すりごまは、すった瞬間から香りが飛び始めるからです。市販品を使う場合も、フライパンで軽く炒り直すと香りが戻ります。ぜひ試してみてください。
Q. ごまは炒ってからするべきですか?
A. はい、軽く炒ってからすってください。香ばしさが出て、食欲をそそる香りになります。すでに「炒りごま」として売られているものでも、さっと温め直すだけで違います。焦がさないよう、弱めの中火で香りが立つまでで十分です。
Q. すり鉢が動いてしまいます
A. 濡らして固く絞った布巾を下に敷いてください。すり鉢が固定されて、力が逃げなくなります。両手が使えないときは、鉢を足で挟んで押さえる方法もあります。
Q. すり鉢の洗い方は?
A. 櫛目の溝にごまが残りやすいので、たわしやブラシで溝に沿って洗ってください。洗剤の匂いが移りやすいので、使う量は控えめに。洗ったあとはしっかり乾かしてから収納します。
Q. フードプロセッサーでもできますか?
A. 今回はハンドブレンダーで試しましたが、フードプロセッサーでも同様の結果になると考えられます。どちらも刃で切り刻む構造なので、量が少ないと刃が空回りしてムラが出やすい点も共通です。違いはミキサーとフードプロセッサーの違いで解説しています。
まとめ
- 代用の1位はハンドブレンダー。香りの立ち方が本物に次ぐ。ただしムラは出る
- 2位は袋+めん棒。皮は残るが、程よく油と香りが出て十分おいしい
- 3位は包丁(切りごま)。穏やかで上品。わずかに苦みを感じることも
- 4位の器の底は、ほぼ変化なし。平らな面ではごまが逃げてしまう
- どの方法でも、すり始める前に軽く炒ると香りが変わる
- すり鉢の強みは櫛目。20分すれば当たりごま(ペースト)まで到達できる
- 当たりごまは代用では作れない。ここが本物を持つ意味
「すりごまが少し欲しいだけ」なら、代用で十分です。けれどごまの香りを本気で立たせたいとき、すり鉢は代わりのきかない道具でした。1分の実験と、20分の当たりごま。その両方を試して、あらためてそう感じています。
すりごまを使う料理ではいんげんの胡麻和えのレシピも公開しています。道具の代用については鬼おろしの代用を5パターン実測比較、裏ごし器がなくても大丈夫!家にあるもので代用する方法もあわせてご覧ください。

