ポルトガルの町中にある大衆食堂(タスカ)に入ると、黒板メニューに必ずと言ってよいほど書かれている料理があります。
それが「ビトック(bitoque)」です。
薄切りの牛肉をスキレットで豪快に焼き、白ワインとマスタードのソースをさっとからめて、目玉焼きをのせる。シンプルだけど、ビールや赤ワインと一緒に食べると最高においしい、ポルトガルの国民食とも言える一皿です。
4年間ポルトガルで公邸料理人として働いていた私が、本場の味をできるだけ忠実に家庭で再現できるレシピをお伝えします。
ビトックとは?ポルトガルの大衆食堂の定番料理
ビトック(bitoque)は、ポルトガルの大衆食堂では昼食の定番メニューです。
薄切りの牛肉をフライパンやスキレットで強火でさっと焼き、目玉焼きをのせてフライドポテトやライスと一緒に盛り付けるのが基本スタイル。焼いた後のフライパンに白ワインとマスタードを加えて作るシンプルなソースが、この料理の味の決め手です。
高級レストランの料理ではなく、地元の人が昼にビールや安い赤ワインと一緒に気軽に食べる、親しみやすい料理です。霜降りの高級肉は使わず、赤みの安い肉を使うのが本場流。それでも十分においしく仕上がります。
材料(2人分)
・牛肉(ステーキ用・赤みの薄切り 約5mm) 2枚(200〜250g)
・にんにく 4〜5片(軽くつぶす)
・ローズマリー 2〜3枝
・オリーブオイル 大さじ2
・塩・黒こしょう 適量
【ソース】
・白ワイン 大さじ3
・粒マスタード 小さじ2
【添え物】
・サラダ
・卵 2個(目玉焼き用)
・フライドポテトまたはライス お好みで
作り方
①肉の下準備

牛肉はオリーブオイル、つぶしたにんにく、ローズマリーと一緒にバットに並べ、15〜30分ほど漬けておきます。
塩・こしょうは焼く直前に両面にしっかりふります。下味をつけすぎると肉から水分が出てしまうので、マリネは油と香草だけにしておくのがポイントです。
②肉を焼く


スキレットまたは鉄フライパンを強火でしっかり予熱します。煙が出るくらいまで熱くなったら、オリーブオイルを少量ひいて肉を入れます。
にんにくとローズマリーも一緒に入れてOKです。
厚さ5mm程度の薄切り肉なので、片面1〜1分半ずつ焼けば十分です。表面にしっかり焼き色をつけることが大切で、蒸らす必要はありません。焼けたら取り出して休ませておきます。
③ソースを作る



肉を取り出したフライパンにそのまま白ワインを加えます。フライパンの底に残った肉の旨味(焦げ)をヘラでこそげながら煮詰めます。
水分が半量程度になったら粒マスタードを加えてさっと混ぜれば完成です。
このソースが旨味の塊です。難しいことは何もなく、焼いた後のフライパンを無駄にしないだけでこれだけおいしいソースができます。
④盛り付け


皿に焼いた肉をのせ、ソースをかけます。別のフライパンで焼いた目玉焼きを肉の上にのせ、サラダ、フライドポテトまたはライスを添えれば完成です。

目玉焼きは、蓋をして軽く蒸し焼きにするのがおすすめです。白身はしっかり火を通しつつ、黄身は半熟に仕上げましょう。
黄身をくずすと、白ワインとマスタードのソースと混ざり合い、まるでもうひとつのソースのようにとろりと肉にからみます。これがビトックの醍醐味です。
本場ポルトガルとの違いと現地エピソード
本場では「ピカーニャ(picanha)」という部位がよく使われます。日本では「イチボ」と呼ばれる、牛のお尻に近い部位で、赤みで旨味が強く、薄く切って強火で焼くのに向いています。
日本のスーパーではなかなか手に入りにくいですが、赤みの牛ステーキ用肉であれば代用できます。霜降りの高級肉よりも、むしろ赤みの安い肉の方が本場の味に近くなります。
ポルトガルでは昼食に食べることが多く、現地の食堂では黒板に「本日のビトック」と書かれていることもよくありました。テーブルに運ばれてくる瞬間の香りが、今でも忘れられません。
スキレットで焼くのがおすすめな理由
ビトックを家庭で作るなら、スキレットまたは鉄フライパンが最もおすすめです。
理由は、強火の高温をしっかり保てること。テフロン加工のフライパンは高温に弱く、この料理に必要な「表面をしっかり焼き固める」火力が出しにくいです。
鉄製の調理器具は蓄熱性が高く、肉を入れたときに温度が下がりにくいため、短時間で香ばしい焼き色がつきます。ソースを作るときも、フライパンの旨味をそのまま活かせるのが鉄製の強みです。
私が使っているのはLODGEのスキレットです。重さはありますが、一生使える道具として重宝しています。
まとめ
ビトックは、材料も作り方もシンプルですが、ポルトガルの食文化が凝縮された一皿です。
薄切り肉をスキレットで強火でさっと焼き、白ワインとマスタードのソースをからめるだけ。週末のランチや、ちょっと特別な夕食にぜひ作ってみてください。
現地の雰囲気を出したいなら、冷えたビールか安い赤ワインを一緒に用意するのをお忘れなく。

